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魚体の変化
魚の状態は、「生」>「死」>「硬直開始」>「完全硬直」>「解硬」>「軟化」>「腐敗」という順序で変化します。「死」>「完全硬直」の状態を"活き"と称します。この状態で出回ったものを市場では"活魚"といいます。 そして、「完全硬直」が一定時間続くと「解硬」が始まり、硬直は解けていきます。この状態を"鮮魚"と称します。その後、「軟化」が始まり、異臭が感じられる「腐敗」状態になります。
「死」>「解硬」の状態は、"活きが良い"、「軟化」以降は、"活きが悪い"とされます。
活絞めをする理由
活絞めとは、魚の神経を切断して脳を破壊することです。活絞めせず、苦悶死した魚は、直ちに死後硬直に入り、熟成が進んでいきます。その反面、活絞めした魚は、死後硬直の開始が遅いので鮮度の良い状態を長く保つことができます。また、体内の血を抜くことにより生臭さも減少します。
スーパーなどに並ぶ魚は、ブランド魚(活絞めしたものが多い)を除いて氷絞めや定置網の中でストレスや恐怖感を与えられて苦悶死した魚なので身持ちが悪く、私たちの食卓に並ぶ頃には、鮮度が悪くなってしまっているのが現状です。また、魚類は、死後イノシン酸(うま味成分のひとつ)が増加、蓄積されるので活けづくり魚(鮨屋などの狭い水槽で泳いでいる魚を活きたまま捌いたもの)よりも少し時間を置いた活絞め魚のほうが美味しいとされます。
以上のことから活絞めをすることにより鮮度を限りなく新鮮に保つことが出来ると言えます。
活絞めの仕方
たまにキープした魚をスカリに入れて帰る直前に絞めている人(私も過去は)を見かけますが、これは時間の無駄(一瞬の時合を逃す)であり、鮮度を落としてしまっているようなものです。
スカリに入れられた魚は、狭い網の中でストレスと恐怖感を与えられ、常に緊張状態にあります。また、ウネリによってスカリが磯に叩きつけられるので魚が痛んでしまいます。さらに寄生虫が魚体に入り込む可能性も高まるのでキープする魚は、一時水汲みバッカンなどに入れておいてアタリが無くなった時点で絞めます。
- エラ蓋の中から心臓の方(目の後ろあたり)へ向かってナイフを入れます。目がクリクリッと動けば成功です。
- 次に尾びれの付け根付近にもナイフを入れます。ここは、中骨を切断するつもりで深めにナイフを入れます。
- 水汲みバッカンなどに新鮮な海水を入れ、頭を下にして5分程浸けておきます。夏場は、5分以上浸けると逆に鮮度が落ちます。 また、複数匹絞める時は、その都度海水を汲み直します。血水状態の海水に浸けると血の抜けが悪くなるからです。
一説には、脳天を一撃して一気に絞めるよりもエラに軽くナイフを入れて泳がせるほうが血の抜けがいいとされていますが、魚にとっては悲惨です。ひと思いに一瞬で命を絶ってくれたほうがいいのでは?と私は思います。人間の勝手な解釈だ、と言われたらそれまでですが。また、私感ですが活絞めして血さえ抜いていれば夏場の口太メジナでも「臭くて食べられない!」なんてことはないと思います。少なくとも養殖のマダイよりは美味しいかと。
※血水状態の海水は、ポイントから離れた場所(もちろん釣り人のいないところ)に捨ててください。 メジナに関わらず、魚類は、血の味、匂いに敏感でそれを感知すると極端に食い気が落ちます。本能的に「血の味、匂い=危険」と感じるためでしょう。
持ち帰り方
- クーラーに大きめの氷か凍らせたペットボトルを入れていきます。
◇ 氷の場合 : 家庭用の冷凍庫で作ったものではダメです。釣具屋さんで購入することをオススメします。
◇ ペットボトルの場合 : 保冷力が弱いので十分すぎるくらい持って行っても損はしないでしょう。また、余分に持っていくと飲むことが出来るので暑い夏場は重宝します。
- クーラーに活絞めした魚を入れます。
◇ 氷の場合 : 魚は、ビニール袋に入れて溶けた氷水が魚の皮膚に直接触れないようにします。この作業は、意外と大事で魚の氷焼けや水分を吸収して水っぽくなるのを防いでくれます。
◇ ペットボトルの場合 : ペットボトルのフタを外して冷気がクーラー内に拡がるようにします。魚は、氷の場合と同じようにビニール袋に入れます。
- 冷気は、上から下に流れるので魚の下に氷を敷いただけでは、あまり効果を感じられません。
なので魚の上から砕いた氷を被せます。被せる氷は、砕きすぎないのが鮮度を保つコツです。